現場で感じている家族ケアに関する様々な事柄について、家族支援専門看護師が個別に相談し、関わりの糸口を一緒に考えていけたらと思います。
学会会場での開催時同様、気軽に立ち寄るお気持ちでご相談いただけます。
第1回 | 2021年7月4日(日) 15:00〜 |
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第2回 | 2021年10月2日(土)・3日(日) *学会期間中 |
第3回 | 2021年11月14日(日) 15:30〜 |
第4回 | 2022年7月4日(日) 15:00〜 |
愛知県医療療育総合センター 野々山敦夫
認定年度:2011年
小児期から疾患や障がいをもちながら生きる患者とその父母らと関わる機会を多く得る中で、家族の誰かの努力や頑張りとは違う、家族全体で協力し発揮される力が、患者の健康はもちろん、家族全体の安寧な生活に大きく貢献しているのを目の当たりにしました。そのような、家族全体の力が発揮されるように支援することを目的とする家族看護に興味を持ったことがきっかけで、家族支援専門看護師を目指しました。
当施設は主に小児期から疾患や障がいをもちながら生活する方が利用していらっしゃいますが、その中の多くの方が生涯にわたってセルフケアが困難なため、家族の誰かがその方のケアを担う場合が大変多いです。また、ケアをする‐ケアを受けるという関係や、患者をケアする役割が、家族の中に長期間あり続けることで、患者を含めた家族一人ひとりに大きな影響がおよぶ場合も多いです。このような背景をふまえ、当施設では伝統的に、患者のケア役割を支えるというだけではなく、患者を含む家族全体をケアするということが重視されています。このような施設に勤務する家族支援専門看護師として、現在は病棟に所属しつつ、院内全体を通して具体的には以下のような活動をしています。
①病棟での家族支援;各病棟で直接家族に対して行う支援として、「ケアを含む家族内の役割を頑張りすぎてしまう家族の役割再配分やセルフケア向上支援」「患者とそのきょうだいへの関わりを平等にできない家族のジレンマへの支援」「患者の症状や障がいの変化に向き合うことが困難な家族の適応支援」などが挙げられます。「私たち家族はこうありたい」と望む姿や、それを目指して発揮される家族の力のありようは、本当に家族それぞれです。従いまして、それら家族の力を支援する方法も、非常に個別具体的だと言えます。一見すると支援に唯一の正解はなく、それゆえ家族看護とは大変難しいもののように思われるかもしれません。ですが、患者を含む家族が直面する課題に対して、一緒になって考え工夫することや、そのような過程を経て家族の力が発揮されることで、疾患や障がいがある患者も家族も、前向きで元気になる姿を目の当たりにできることは、非常に大きなやりがいになっています。
北里大学病院 看護部 トータルサポートセンタ- 髙見紀子
認定年度:2008年
卒業校:東海大学大学院
家族看護をしっかりと学びたいと思い、大学院に進学したことがきっかけとなりました。当時は、家族支援専門看護師は実在しておらず、実際にイメージをすることは難しい状況でした。しかし、鈴木和子先生や多くの方のご支援を受けながら、専門看護師資格取得にむけて日々研鑽をすることができました。私は自身の患者家族としての経験から、家族看護を基盤とした家族支援はとても重要な役割であると感じていました。取得から今年で13年目になりますが、少しずつではありますが、「家族支援専門看護師」が周知さているように思います。
大学院を修了した後は、主に病棟で勤務をしていました。しかし、病棟で一スタッフとして勤務をすることに限界を感じ、上司のすすめで現在の部署に異動をしました。現在の部署では、主に退院調整・在宅療養支援看護師としての役割を担っています。これまでは、がん患者や神経難病患者と家族への介入をしてきました。現在は、小児を中心とした患児家族への介入と成人の慢性疾患(心不全など)の患者家族への介入をしています。
2年前には、病院から看護学部に派遣され基礎教育に携わったことで、現在は学生の臨地実習を担当する臨床教員の役割も担っています。看護学部に派遣をされた1年間は、学生と共に、講義(家族看護学をはじめ、家族に関する様々な講義)や学内演習を受け持ちました。また、在宅看護学実習では地域で暮らす患者家族への支援を学生と共に学びました。学生を通して地域完結型看護教育に携わることができたことで、患者家族への看護や地域連携のあり方について振り返る機会となりました。病院に戻った現在は、その経験を臨床の場で活かすことができています。退院後の生活を見据えた支援や在宅療養生活を支援することは、家族全体を捉えた看護が必要です。地域包括ケアシステムを理解し、病院内だけではなく地域関係機関との多職種連携をすることが今後も求められており、家族看護は重要な役割を担っていると考えています。
今後も臨床の場から基礎教育に携わること、また、臨床の場では自身の6つの役割を発揮できるように研鑽を積むことが重要であると考えています。今年度は、継続教育として新人看護職員のオリエンテーションにおいて、「患者家族との関わり」について講義をしました。学生時の臨地実習では、コロナ禍において家族の面会制限があり、実際の家族に介入をすることができなかった新入看護職員ですが、“家族のケアは、患者のケアに繋がっていること”について理解できるように、共に実践していきたいと思っています。家族看護は何気ないと思われる会話も支援になることを伝えています。
ここで、ご家族との面談時のエピソードをご紹介します。面談後に、ご家族から「今日は病棟での面会は許可されていないので、ママ(患者さん)に会わずに帰ります。でも、先日、久しぶりに面会が許可されてママに会うことができました。良い表情で安心しました。早く家に連れて帰ってあげたい。面会した時に、病棟の看護師さんが、こんなに笑っている○○さん(患者さん)を初めて見ました。今日はご主人と娘さんに会えるからと朝からリハビリを頑張っておられました。やっぱりご家族の力ってすごいですね。」と言われたと話してくださいました。ご家族からは「その時の看護師さんからの言葉は、ママに会えない時でも家族も頑張る力になりました」と話してくださいました。ちょっとした看護師の声かけが家族全体の力を引き出すきっかけとなったことを病棟看護師にフィードバックしたことで、私たち医療者も患者さんご家族から力を得て実践することができていています。
余談ですが、私はNICUや小児病棟の患児の笑顔に癒やされながら活力を得ています。
社会医療法人 誠光会 淡海医療センター 小野美雪
認定年度:2015年
私の勤務する淡海医療センターは、滋賀県の草津市にある地域の急性期医療を担う高度急性期病院です。淡海医療センターのある圏域は、滋賀県の南部で京阪神のベッドタウンであることから昼夜間人口比率95.1%と介護する子世代が主介護者であることが多い特徴があります。現在は看護管理室に所属し横断的活動を行いながら、倫理委員会、ACPプロジェクトチームと、認知症ケアサポートチーム、緩和ケアチーム、にも従事しています。
家族支援専門看護師の認定を受けたときは、退院調整部門に所属しており、退院調整を担当することで介護家族に「実践」と「調整」を行う経験をつみました。当時は診療報酬の改定で退院支援加算が始まったときで、病院内の医療従事者と在宅療養の支援者の間で価値の違いによる温度差が大きい中、仕事と介護を両立する家族の介護力に収まる在宅療養方法に調整することに、やりがいを感じました。同じ法人内の訪問看護ステーションから声をかけていただき、月1回の事例検討会において家族看護のコンサルテーションを行っていました。
専門看護師認定4年後に、一般病棟をへて回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ)で、管理者と家族支援専門看護師を兼任しました。時間的な制限がある中でのCNS活動であったため、管理者のパワーを活用して回リハでの家族看護上の問題を改善することと、所属している委員会や横断的チームを機能させることに力を注ぎました。回リハでは、退院前の家族介入が不十分で介護生活に家族が困惑する事例が多発していたため、家族介入のパターンの分析は家族支援CNSの知識を使い、スタッフへの周知は管理者のパワーを使い、運用方法の検討はスタッフ主体のプロジェクトチームに改善の意図を伝えて任せました。立場や力を意図的に使い分け、家族介入の改善を推進していきました。倫理委員会・ACPプロジェクトチームでは、「説明と同意」や「終末期の医療の意思決定プロセス」の倫理指針の整備から始まり、院内でのDNARの扱われ方の問題の改善、終末期の治療方針に本人の推定意思が反映されないという問題の改善、ACPの推進に、関連するメンバー構成でチームを作り、取り組んできました。チームを活性化し院内の問題改善を進めるに当たり、起こっている現象をシステムで捉えられる家族支援CNSの力は、非常に有益だと感じています。
現在は、新設された「重症患者初期対応充実加算」の算定要件で配置されたメディエーターのサポートを通して、ICU・HCU入院患者の意思決定支援・家族ケアの充実に携わっています。私の役割は、患者・家族の意向の橋渡しをすることができるようメディエーターのサポートを行うこと、危機状態にある家族のアセスメントと支援方策のコンサルテーションを行うこと、メディエーターとICU・HCUスタッフとの連携が適切に行えるよう調整を行うことです。始まったばかりですが、メディエーターの実践力が活かせ、ICU・HCUスタッフの家族への関わり方の困難感が緩和できるように、活動していきたいと考えています。
北里大学病院 看護部 トータルサポートセンタ- 髙見紀子
認定年度:2008年
卒業校:東海大学大学院
家族看護をしっかりと学びたいと思い、大学院に進学したことがきっかけとなりました。当時は、家族支援専門看護師は実在しておらず、実際にイメージをすることは難しい状況でした。しかし、鈴木和子先生や多くの方のご支援を受けながら、専門看護師資格取得にむけて日々研鑽をすることができました。私は自身の患者家族としての経験から、家族看護を基盤とした家族支援はとても重要な役割であると感じていました。取得から今年で13年目になりますが、少しずつではありますが、「家族支援専門看護師」が周知さているように思います。
大学院を修了した後は、主に病棟で勤務をしていました。しかし、病棟で一スタッフとして勤務をすることに限界を感じ、上司のすすめで現在の部署に異動をしました。現在の部署では、主に退院調整・在宅療養支援看護師としての役割を担っています。これまでは、がん患者や神経難病患者と家族への介入をしてきました。現在は、小児を中心とした患児家族への介入と成人の慢性疾患(心不全など)の患者家族への介入をしています。
2年前には、病院から看護学部に派遣され基礎教育に携わったことで、現在は学生の臨地実習を担当する臨床教員の役割も担っています。看護学部に派遣をされた1年間は、学生と共に、講義(家族看護学をはじめ、家族に関する様々な講義)や学内演習を受け持ちました。また、在宅看護学実習では地域で暮らす患者家族への支援を学生と共に学びました。学生を通して地域完結型看護教育に携わることができたことで、患者家族への看護や地域連携のあり方について振り返る機会となりました。病院に戻った現在は、その経験を臨床の場で活かすことができています。退院後の生活を見据えた支援や在宅療養生活を支援することは、家族全体を捉えた看護が必要です。地域包括ケアシステムを理解し、病院内だけではなく地域関係機関との多職種連携をすることが今後も求められており、家族看護は重要な役割を担っていると考えています。
今後も臨床の場から基礎教育に携わること、また、臨床の場では自身の6つの役割を発揮できるように研鑽を積むことが重要であると考えています。今年度は、継続教育として新人看護職員のオリエンテーションにおいて、「患者家族との関わり」について講義をしました。学生時の臨地実習では、コロナ禍において家族の面会制限があり、実際の家族に介入をすることができなかった新入看護職員ですが、“家族のケアは、患者のケアに繋がっていること”について理解できるように、共に実践していきたいと思っています。家族看護は何気ないと思われる会話も支援になることを伝えています。
ここで、ご家族との面談時のエピソードをご紹介します。面談後に、ご家族から「今日は病棟での面会は許可されていないので、ママ(患者さん)に会わずに帰ります。でも、先日、久しぶりに面会が許可されてママに会うことができました。良い表情で安心しました。早く家に連れて帰ってあげたい。面会した時に、病棟の看護師さんが、こんなに笑っている○○さん(患者さん)を初めて見ました。今日はご主人と娘さんに会えるからと朝からリハビリを頑張っておられました。やっぱりご家族の力ってすごいですね。」と言われたと話してくださいました。ご家族からは「その時の看護師さんからの言葉は、ママに会えない時でも家族も頑張る力になりました」と話してくださいました。ちょっとした看護師の声かけが家族全体の力を引き出すきっかけとなったことを病棟看護師にフィードバックしたことで、私たち医療者も患者さんご家族から力を得て実践することができていています。
余談ですが、私はNICUや小児病棟の患児の笑顔に癒やされながら活力を得ています。
堺市立総合医療センター 入退院支援課 藤原真弓
認定年度:2013年
卒業校:大阪公立大学大学院(旧大阪府立大学大学院)
クリティカル領域において、突然なんの準備もなく、生命の危機的状況に陥った患者家族の苦悩を目の当たりにしたことです。家族は患者の命だけは救ってほしいと訴え、やがて月日の経過とともに管につながれ意識の戻らない患者を可哀そうで見ていられないと嘆きます。クリティカルの現場にこそ家族支援が重要と感じましたが、命を救うことが最優先とされる現場で十分な家族支援は難しくジレンマに陥ったのが家族支援専門看護師を目指した最初のきっかけになります。
大学院での2年間の学びは寝る間も惜しんで学業に励む毎日となりましたが、一方で看護学のみならず、社会学、心理学あるいは生物学など様々な学問領域の側面から家族を捉えることの楽しさを学び、新しく知見を広げることができたことに喜びを感じました。2020年に現施設へ活動の場を転換し、現在は退院調整看護師として、臨床現場のスタッフが家族看護への志気を高められるよう教育し、ともに患者を含めた家族への支援を行っています。クリティカルの現場にこそ家族支援が重要と感じ、家族支援専門看護師を目指す原点となった初心はもちつつ、家族支援はあらゆる看護領域で必要不可欠なものであると感じています。実際にスタッフとともにかかわった事例として、在宅療養を強く希望したがん末期の患者家族のケースをご紹介します。高齢夫婦の2人暮らしで、妻の不安は非常に大きく在宅療養に踏み切れずにいました。そこで家族支援専門看護師として家族の相互作用に視点をおき、円環的質問法を用い、患者が在宅療養に何を求め、残された時間をどのように過ごしたいのかを妻と共有しました。また、患者同席のもと、妻が何に不安を感じ自信がないのかについても確認しました。患者は暮らし慣れた家で妻や子ども、孫とともに穏やかに過ごすことを望んでいました(コロナの影響で病院は面会禁止のため)。妻以外に協力を得られる家族の有無を尋ねたところ、子どもや孫たちもできる限りのサポートをしてくれることになりました。家族が相互理解を深められるよう導くことで、家族自らが、長年の家族のかたちを変化させることなく、家族らしさを大切にしながら穏やかな時間を過ごすという目標に向かうことができました。そこで訪問診療、訪問看護、介護サービス等地域の体制も整えたところで在宅療養へ踏み切ることになりました。のちに、患者は家族に見守られながら在宅で看取られ、家族も最後の時間をともに過ごせたことを喜んでおられました。家族支援専門看護師の役割は、このように家族らしさを大切にしながら、家族の持つ力を最大限に発揮できるよう支えることであると考えます。
臨床現場でお仕事をされている方々はお気づきと思いますが、患者と家族は良くも悪くも相互に影響を与え合う存在です。家族をひとつのシステムと捉え、家族全体に働きかけることは疾病の回復促進や安心して療養できる環境の提供にもつながり、非常に有効な関りになります。
近畿大学医学部附属病院 藤野崇
私は、近畿大学医学部附属病院で、家族支援専門看護師として活動を行っています。職場は、「患者支援センター」という、患者家族支援部門や地域連携などが一体になった部門です。この部署に所属しながら、部署での役割を果たすと共に、家族支援のために様々な場所に出向いて家族支援を行っているのです。
家族支援専門看護師には、6つの機能(実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究)があり、これらの6つの機能を使いながら、普段の活動を行っています。その中で、今回の活動報告では、「実践」の役割に焦点を当てて、どのような実践をしているかの報告を行います。
現在、患者家族支援部門に籍を置きながら、①患者支援センターでの外来通院中の患者家族の療養相談、②外来での家族看護実践、③病棟での家族看護実践を行っています。
①の「患者支援センターでの外来通院中の患者家族の療養相談」としては、週に2回外来相談の窓口担当となり、院内外の医療・福祉・保険・介護などの関係者からの患者家族のサポートの依頼や患者家族の直接の悩みの相談に対応して、家族看護の実践を行っています。「がん患者家族の方の療養場所や方法の意思決定援」「看取りの体制を作るための家族役割の調整」などは、その一例ですが、外来相談では、様々な領域、様々な状況に対応することが求められます。
②外来での家族看護実践としては、様々な外来に出向き、あるいは医療者からの依頼を受けて、外来通院中の患者家族のサポートを行っています。様々な科に関わりますが、もっとも多いのは小児科で、「慢性疾患の子どもと両親の親子関係の悩み」「病気の子どもと他の兄弟の関わり方に差があることの悩み」など、病気と共に生きる上で起こってくる様々な悩みを乗り越え、家族としての力を出せるようにサポートを行っています。
③病棟での家族看護実践としては、クリティカル領域が最も関わることが多い領域となっています。例えば「緊急入院で危機的な状況になっている家族への危機介入」「障がいをもつことに向き合うことが難しい患者家族の適応支援」などが例となります。
簡単にではありますが、現在の家族看護実践の内容をお伝えしました。見て頂くと分かるように、疾患を問わず、クリティカルからエンドオブライフまで状況を問わず様々な家族に関する課題への対応を求められます。
このような多様な課題に対応できるのは、「様々な健康問題を持った人たちが共に生きる時に起こる家族としての力の出しにくさ」を解決する家族看護学をベースにしているからなのです。疾患や状況の影響は受けるとしても、家族が出会う困難には、共通な点も多くあります。家族支援専門看護師は、このような共通性に注目して、家族の力を引き出す支援を部署を超えて、実践しているのです。